蜜蜂と遠雷
- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2016/09/23
- メディア: 単行本
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風間塵は父と各地を転々とする16歳の少年です。彼の自由で独特な演奏スタイルは、物語を通して様々な人に影響を与えます。
かつてピアノの天才少女と呼ばれCDデビューも果たしていながら、ピアノの指導者でもありマネージャーでもあった最愛の母の死以来、人前でピアノを弾くことを避けていた栄伝亜夜は、20歳になった今、再びコンクールに臨みます。
楽器店勤務の社会人である高島明石は、自分の音楽家としての最後のコンクールと覚悟して、応募規定年齢ぎりぎりの28歳で挑戦します。
名門ジュリアード音楽院から参加する日系の19歳マサル・カルロス・レヴィ・アナトールは、高い演奏技術と豊かなセンスを兼ね備え、優勝候補と目されています。
本作品の魅力のひとつは、4人それぞれのコンクールに対する思いや、音楽についての考え方、演奏に臨むまでの心理が、予選から本選を通してとても丁寧に描かれることです。年齢や経歴、性格も様々ですが、音楽へ対する清々しいほどのまっすぐな姿勢は、4人それぞれを応援したくなるような気持ちにさせられます。
もうひとつの魅力は、演奏の描写です。クラシック音楽の演奏を時には風景のように、時には物語のように、演奏者の心情と絡めながら描き想像を掻き立てます。コンクールやクラシック音楽に馴染みがない人でも本作品ではコンクールの緊張感や会場の興奮、そして壮大な演奏を感じられるのではないかと思います。
本作品は表現豊かな音楽小説であり、若者たちの爽やかな群像小説でもあります。