ほんとの出会い系ブログ

今まで出会った本をご紹介します。人気の作品や良書と呼ばれる本が多いと思いますので、出会いのきっかけになれば幸いです。

炎路を行く者: 守り人作品集

精霊の守り人」から始まる「守り人シリーズ」の12巻目で、2つの作品が収録されています。1つ目はタルシュ帝国の密偵ヒュウゴが主人公の「炎路の旅人」で、2つ目はバルサが主人公の「十五の我には」です。2つの作品は互いに直接的な関連はありませんが、どちらも「天と地の守り人」の頃のバルサとヒュウゴの回想として描かれます。

守り人シリーズでは、本のタイトルに「旅人」が付くとバルサ以外が主人公の話になりますが、その意味で1つ目の作品「炎路の旅人」もまた、バルサは登場せず、ヒュウゴを中心に話が進みます。

ヒュウゴは南の大陸のヨゴ皇国で、ヨゴ帝の近衛兵である「帝の盾」の家系に生まれました。ヒュウゴが十代の頃、タルシュ帝国の侵攻により住む場所や家族を失ってしまいます。ひとり逃げ延びたヒュウゴは、リュアンという不思議な少女に助けられ、平民として酒場で慣れない下働きをして生きていくことになります。ヨゴ皇国がタルシュ帝国に征服され屈辱的な「枝国」になったにもかかわらず、平民の生活は今までとあまり変わりないことに、違和感とくすぶった怒りを持ち続けるなか、ある男と出会ったことでヒュウゴの心は少しずつ変化することになります。

2つ目の物語「十五の我には」はバルサが十代の頃の話です。ジグロと共に隊商の護衛をしていたバルサは、盗賊に襲われて怪我を負ってしまい、しばらくの間ある街の酒場で働くことになります。この物語は「炎路の旅人」に比べて短い話ですが、若くて未熟なバルサや、そんなバルサを厳しく、優しく守るジグロがとても印象的な話です。

守り人シリーズ本編ではバルサとヒュウゴの接点はそれほど多くはありませんが、二人の生い立ちには良い身分の家系に生まれながら突然家族や家を失い、厳しい環境で生き抜いてきたという共通点があります。そのような十代を過ごした二人が将来チャグムと出会い、チャグムを通じて二人が出会うかと思うと、守り人シリーズという壮大な物語の中にある不思議な縁のようなものが感じられる作品です。

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