虚空の旅人
- 作者: 上橋菜穂子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/07/29
- メディア: 文庫
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守り人シリーズ第4巻の「虚空の旅人」です。3巻までのタイトルは「守り人」ですが本書は「旅人」です。「守り人」の巻はバルサの物語といえますが、「旅人」の巻はチャグムを中心とした物語となります。本書では、チャグムは新ヨゴ皇国の皇太子として、星読博士シュガと共に南の隣国サンガル王国の「新王即位ノ儀」へ出席します。
サンガル王国と新ヨゴ皇国は同盟国です。なぜなら、さらに南には海を挟んでタルシュ帝国という軍事大国が勢力を拡大しつつあるため、二国は同盟を結ぶ方が得策だからです。ところが、サンガル王国にはすでにタルシュ帝国の呪術師ラスグが潜入しており、王国を揺るがすようなある計画が進んでいました。チャグムは、シュガやサンガル王国の同年代の王子・王女と共に、ラスグの陰謀に立ち向かうことになります。
本書では、「精霊の守り人」の頃から数年たち、一国の代表として振る舞うことのできる、成長したチャグムが印象的です。また、海洋国であるサンガル王国にも守り人シリーズに一貫して存在する異世界があり、それはラスグの陰謀やチャグムの行動に深く関わります。
守り人シリーズには個性的な登場人物やバルサの格闘シーンなどの「個人」の魅力があると同時に、様々な文化や習慣を持つ国々と、それら国家間の外交や軍事のような「国」という壮大な視点で物語が進む点も魅力です。本書は、これから国同士が大きく動き出すきっかけを感じさせる巻といえるでしょう。