ほんとの出会い系ブログ

今まで出会った本をご紹介します。人気の作品や良書と呼ばれる本が多いと思いますので、出会いのきっかけになれば幸いです。

鹿の王

2015年本屋大賞第1位、第4回日本医療小説大賞受賞の作品です。著者は国際アンデルセン賞受賞作家で、「守り人シリーズ」でおなじみの上橋菜穂子さんです。架空の国や民族が登場するファンタジー小説であり、病の症状や感染経路、予防、治療などを緻密に描写する医療小説でもあります。

この作品の主人公は二人とされています。一人目は戦士団「独角」の頭でありながら、戦に負けてアカファ岩塩鉱の奴隷となったヴァンです。物語は、アカファ岩塩鉱が山犬のような獣に襲われるところから始まります。獣に噛まれた岩塩鉱の奴隷たちがまもなく謎の病を患って死んでいく中、ヴァンだけが噛まれたにもかかわらず生き残ります。ヴァンは同じく獣に襲われたであろう岩塩鉱の厨房で見つけた一人の幼子を連れて、岩塩鉱から逃亡します。

もう一人の主人公は、優秀な若い医術師ホッサルです。ホッサルはアカファ岩塩鉱の奴隷たちの死体の状態から、250年前に古オタワル王国を滅ぼした原因とされる黒狼熱という病の可能性があるとして調査を進めます。調査の過程で岩塩鉱からヴァンが逃亡したことを知り、病に関する手掛かりを期待してモルファ氏族のサエに跡追いを依頼します。

物語はヴァンとホッサルそれぞれの視点で展開していきます。アカファ岩塩鉱を襲った獣の正体は何か。獣はどこから来たのか。なぜヴァンは生き残ることができたのか。病の治療方法や感染が拡大する可能性はあるのか。これらの謎は、支配する側の東乎瑠帝国と支配される側のアカファ王国の関係、東乎瑠人やオタワル人、火馬の民、山地の民など、民族ごとの風習や地域の特性といった様々な要素が絡み合いながら、物語が進むにつれて徐々に真相に近づいていきます。

本作品ではタイトルにもあるとおり動物が重要な鍵を握っています。動物もまた、魅力的な世界観を形作る要素のひとつとなっています。文化人類学者でもある上橋菜穂子さんが作り出す壮大で魅力的な世界にぜひ触れてみてください。

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