神の守り人〈下〉帰還編
- 作者: 上橋菜穂子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/07/28
- メディア: 文庫
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守り人シリーズ第5巻の「神の守り人」下巻です。下巻は主に、捕らえられたタンダとチキサ、それを助けようとするバルサとアスラのそれぞれ二組の場面が物語を展開します。
タンダとチキサを助けるために、バルサとアスラがロタ王国へ向かう隊商の護衛として旅をするところから始まります。隊商は途中、吹雪を避けるために牧夫の小屋へ避難しますが、馬を狙った狼の群れに襲われます。なんとか応戦するバルサたちですが、狼の数に打つ手が無くなった時、再びアスラが「カミサマ」を呼び出そうとします。
一方、捕らえられたタンダとチキサでしたが、スファルの娘であるシハナは父をも欺く計画を進めていました。絶大な力を持つアスラを危険視して殺そうとするスファルに対し、シハナはその力を利用しようとしていたのです。それを知ったスファルはタンダと共に脱出することになります。
徐々にシハナの計画の詳細が明らかになり、現実味を帯びていきます。しかしそれはシハナだけの力ではなく、南部の大領主の思惑や王家の思惑、タルの民の思惑などが絡み合った結果でした。アスラの異能の力を取り巻くこれらの思惑と、アスラを道具のように扱う彼らからアスラを救い出そうとするバルサとタンダ。下巻は様々な思惑で様々な行動していた登場人物たちが、物語のクライマックスに向けてロタ王国のジタン祭儀場を目指します。
アスラの絶大な力は国が揺るがすほどの力ですが、バルサはあくまでアスラを一人の少女として助け出そうとします。それは、アスラが大切な人を守るためにその力で人を殺すことをも望んでしまうことに対し、バルサが自分の経験から、たとえ人を守るためでも人を殺すことのおぞましさをアスラに伝えたいという思いからでした。バルサは、アスラの身を助けるのと同時に、アスラが今後味わうであろうバルサと同じ苦しみからも助けようとしているのが印象的です。