阿部一族・舞姫
ドイツ留学の経験を踏まえて書かれた初期の代表作である「舞姫」と、同じくドイツを舞台とした「うたかたの記」は、ドイツ三部作(あと一つは「文づかい」)に数えられる名作。どちらも悲恋物語で好みなのですが、雅文体で書かれているため読むのに苦労しました。
その後、森鷗外は言文一致の小説を書くようになるため、「鶏」などは小倉に住んでいた時代の日常の出来事を綴っているということもあって、読みやすく親しみやすい内容です。
一方で森鷗外は歴史小説も多く残しており、「阿部一族」や「堺事件」は切腹やそれに関わる人々の描写が興味深いです。他にも中国の伝承をもとにした「寒山拾得」や哲学的な内容の「かのように」など、この短篇集一冊で様々なジャンルに触れることができます。