Lean Analytics
Lean Analytics ―スタートアップのためのデータ解析と活用法 (THE LEAN SERIES)
- 作者: アリステア・クロール,ベンジャミン・ヨスコビッツ,林千晶,エリック・リース,角征典
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2015/01/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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リーンスタートアップの中心的なコンセプトは「構築」「計測」「学習」のプロセスとされています。このプロセスによって製品やサービスのリスクを特定し、効率的に開発を進めることができます。本書はこのプロセスの中の「計測」に注目しています。
製品やサービスを新たに開発する際、または、すでに運用しているサービスを改善する際、やみくもに手をつけるのではなく、データに基づいて効果の検証と改善を繰り返すことが良いということはよく聞きます。ところが、データを取得して保存・検索する仕組みを作ることはできても、どのようなデータを取得(計測)すべきで、取得したデータをどのように扱えばよいかがよくわからないという開発者は多いのではないでしょうか。それには唯一の答えがあるわけではなく、製品やサービスの種類によって多種多様と言えます。
そこで本書は、次のような主要な6つのビジネスモデルを対象に、それぞれで見るべき指標(取得すべきデータ)を解説します。
- ECサイト
Amazonのような小売業のビジネスモデルです。訪問者がサイトで商品を購入するとそれが収益となります。 - SaaS
GmailやDropboxのようなソフトウェアをオンデマンドで提供するビジネスモデルです。利用者が支払う月額料金のような形で収益を得ます。 - 無料モバイルアプリ
iPhoneやAndroidのようなスマートフォンアプリによるビジネスモデルです。アプリ内の広告や課金機能によって収益を得ます。 - メディアサイト
Googleの検索エンジンや多くのニュースサイトのようなビジネスモデルです。広告が主な収益源です。 - ユーザー制作コンテンツ
WikipediaやYouTubeのようなユーザーがコンテンツを制作することで成り立つビジネスモデルです。広告や寄付から収益を得ます。 - ツーサイドマーケットプレイス
オークションサイトのような販売者と購入者を結びつけるビジネスモデルです。購入者と販売者の取引が成立したときに収益を得ます。
また、自分たちが作る製品やサービスが、成長のどの段階(ステージ)にいるかによっても注目すべきポイントは異なります。本書は次のようなステージを定義し、そのステージでフォーカスすべき指標を示します。
- 共感
ターゲットとする市場を理解し、多くの人が気にかけるような解決すべき課題を見つけ、その課題に共感する段階です。インタビューやアンケートが有効です。 - 定着
課題を解決する製品・サービスを構築し、それが受け入れられ、ユーザーが定着するかどうかをテストする段階です。 - 拡散
製品やサービスが定着したら新規顧客の獲得を考える段階へと移ります。これには自然的拡散、人工的拡散、クチコミの3種類の拡散方法があります。 - 収益
収益の最大化と最適化にフォーカスする段階です。 - 拡大
収益が生まれビジネスが軌道に乗ったらプロモーションや販路拡大に投資する段階です。
本書には「ケーススタディ」として実際の企業の事例が数多く紹介されています。抽象的になりがちな解説もこの事例が理解の手助けとなります。
本書のタイトルには「スタートアップのための」とありますが、組織内起業家向けの章もあります。本書の内容はスタートアップ企業だけでなく、すでにサービスを運用し、収益を得ているものの、成長が鈍化した企業や新たな事業を生み出したい企業にも役に立つでしょう。本書を読むと開発者自身が適切な指標を理解することの重要性を感じさせられます。