ほんとの出会い系ブログ

今まで出会った本をご紹介します。人気の作品や良書と呼ばれる本が多いと思いますので、出会いのきっかけになれば幸いです。

倫敦塔・幻影の盾

吾輩は猫である」と同時期に発表された夏目漱石の初期の短編集。

イギリス留学の経験をもとに書かれた「カーライル博物館」は紀行文である一方、同じくイギリスを題材にした「倫敦塔」は歴史を遡るような幻想的な作品。「幻影の盾」と「薤露行」はどちらも欧風ファンタジーのような話でありながら擬古体の文章が特徴的で読むのにちょっと苦労しました。同じく特徴的な文章の「一夜」はある夜の会話劇のような短い実験的な作品。「琴のそら音」は落語の怪談のような雰囲気のある話で、「趣味の遺伝」は日露戦争へ出征した兵士を題材にした作品でありながら展開がミステリーの日常の謎のようでもあり、この一冊で夏目漱石の色々なジャンルを味わえます。

また、幻想的な部分はあの作品へ引き継がれ、擬古体はあの作品へ...と、その後に発表される作品との関連を想像するのもおもしろいです。個人的には「琴のそら音」が好みでした。