ほんとの出会い系ブログ

今まで出会った本をご紹介します。人気の作品や良書と呼ばれる本が多いと思いますので、出会いのきっかけになれば幸いです。

Hadoop徹底入門 第2版

Hadoop徹底入門 第2版 オープンソース分散処理環境の構築

Hadoop徹底入門 第2版 オープンソース分散処理環境の構築

ビッグデータと呼ばれる膨大なデータを処理するためのシステム構築にはHadoopが導入されてきています。Hadoopとはテラバイトやペタバイトクラスの膨大なデータを数十~数千台のサーバを使用して並列分散処理するためのソフトウェアです。Javaで開発されており、サーバを追加することによってスケールアウト可能です。本書は、Hadoopの導入方法から対応するアプリケーションの開発方法、運用、周辺技術まで幅広く解説します。

本書は4部構成となっています。

  • 第1部 Hadoopの基礎
    Hadoopの概要やインストール方法、サンプルアプリケーションの実行までを説明します。Hadoopには分散処理向けのHDFSというファイルシステムがあり、それをMapReduceフレームワークに沿ったアプリケーションが利用します。第1部ではMapReduceアプリケーションの例としてアクセスログ集計や検索エンジンインデックスの作成などが紹介されており、Hadoopでできることがイメージしやすいと思います。

  • 第2部 MapReduceアプリケーション開発
    HadoopJavaで作られていることもあり、MapReduceアプリケーションも基本的にはJavaで実装します。ただし、Java以外のプログラミング言語で実装する方法も提供されており、第2部ではどちらの実装方法も説明します。また、Apache PigやApache Hiveのような、処理を簡易記述できるプロダクトについても説明します。

  • 第3部 Hadoopクラスタの構築と運用
    Hadoopはサーバを追加することでスケールアウトできることが特徴です。第3部ではサーバの構成管理と、モニタリングやメンテナンスのような運用ノウハウについて説明します。

  • 第4部 Hadoopを活用するための技術
    第4部ではHadoopのチューニング方法やHDFSの上に構築される分散型データベースHBase、Hadoopでログを処理するためにFluentdでログを収集する方法などを説明します。

Hadoopは、そのサーバ構成やMapReduceアプリケーションの開発など、運用するまでにいくつものハードルがあります。また、周辺のプロダクトも多く、開発も活発です。本書は、初めてHadoopを導入する際にそのようなハードを下げてくれる一冊といえるでしょう。

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蒼路の旅人

蒼路の旅人 (新潮文庫)

蒼路の旅人 (新潮文庫)

守り人シリーズ第7巻の「蒼路の旅人」です。タイトルが「旅人」となっていることからもわかるとおり、第4巻の「虚空の旅人」と同様にチャグムを中心とした物語です。

「虚空の旅人」で訪問したサンガル王国から戻ったチャグムは、新ヨゴ皇国で皇太子として過ごしていましたが、相変わらず帝から疎まれていました。そんなある日、サンガル王国から新ヨゴ皇国に親書が届きます。それは、サンガル王国がタルシュ帝国から攻められ苦戦しており、援軍を求めるという内容でした。これに対してチャグムはロタ王国やカンバル王国と同盟を結んで対処するよう進言しましたが、帝はこれを拒否し、援軍を送ることを決めてしまいます。その後もこの決定について帝と対立したチャグムは、遂には援軍の船団へ送られることとなってしまいます。これはチャグムにとって死を覚悟しなければならないものでした。

チャグムを乗せた新ヨゴ皇国の船団は、サンガル王国の司令官と合流します。ところが、サンガル王国はすでにタルシュ帝国に服従し、新ヨゴ皇国の攻略に手を貸せば自治権を保障するという申し出を受け入れていました。サンガル王国からの親書は罠だったのです。チャグムや船員たちはサンガル王国の捕虜となってしまいます。虜囚小屋に閉じ込められたチャグムたちは脱走を企てますが、ここからチャグムにとって思いがけない展開が待っています。タルシュ帝国の密偵ヒュウゴの計画が進んでいたのです。

「蒼路の旅人」は「虚空の旅人」の続編と言えるでしょう。「虚空の旅人」で新ヨゴ皇国とサンガル王国の地理的、政治的関係性、強大な軍事力を持つタルシュ帝国の存在が描かれ、「蒼路の旅人」ではそのタルシュ帝国の影がチャグムへ、そして新ヨゴ皇国へと伸びていきます。ここから物語は、いくつもの国を巻き込む壮大な最終シリーズである「天と地の守り人」三部作へと続きます。

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黒冷水

黒冷水 (河出文庫)

黒冷水 (河出文庫)

2015年芥川賞を受賞した羽田圭介さんのデビュー作で、第40回文藝賞を受賞した作品です。

中学二年の弟・修作は、高校二年の兄・正気が留守の間に、兄の部屋をあさってエロ本やエロ動画を見つけることを喜びとしていました。兄が帰ってくるまでの限られた時間で、どこをあさり、獲物を見つけ、「使用」し、あさったことがばれないように正確に元に戻す。修作は自らを「プロのあさり屋」と自負するほどです。

ところが、兄の正気は弟のあさり行為に気づいていました。気づくどころかあさりの手口の荒さに閉口し、本人はばれていないと思っている弟の稚拙さに苛立つほどです。正気は、何度となく繰り返される弟のあさり行為に対して、様々な方法で報復します。それは肉体的に傷つける方法もあれば精神的に追い込む方法もあります。

この兄弟の間にはほとんど会話がありません。互いの主張は父や母に対する会話の中で間接的になされます。これほど互いの行動を意識し嫌悪しているにも関わらず、ほとんど会話がないところに、「冷戦」のような緊張感を感じます。

一見、エロ本を巡るたわいもない兄弟喧嘩に思えますが、その方法や兄弟それぞれの思考は陰湿で粘着質で、互いに対する憎悪の描写はこの小説に独特の雰囲気をもたらしているように思えます。このようにエスカレートしていく憎しみの連鎖は、兄のある行動によって新たな展開を見せます。ぜひ兄弟喧嘩の行方と意表を突くラストを確かめてみてください。

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。6

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。〈6〉 (ガガガ文庫)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。〈6〉 (ガガガ文庫)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」第6巻です。この巻から生徒会長の城廻めぐりが登場します。

夏休みが終わり、9月の文化祭の季節です。文化祭の役割を決めるロングホームルームの時間に保健室でサボっていた比企谷八幡は、教室に戻ると文化祭実行委員になっていました。その日の放課後は女子の実行委員を決めることになるのですが、葉山隼人のすすめもあってスクールカースト二位グループの相模南が担ぎ出されることとなります。相模は口では自信が無いようなことを言うものの、まんざらでもない様子です。

こうして文化祭実行委員に選ばれた八幡と相模は実行委員会に参加することとなりますが、そこには同じく実行委員になっていた雪ノ下雪乃もいました。第一回の実行委員会では委員長を決めます。生徒会長の城廻先輩や顧問の先生は「雪ノ下陽乃の妹」である雪ノ下雪乃に期待しますが、そこへ相模が立候補し、そのまま決定してしまいます。そんな相模ですが、奉仕部にきて委員長のサポートを依頼します。そこには相模が他人の力をあてにしているのが見え隠れします。

今回の奉仕部は、文化祭準備期間で忙しいことに加え、雪ノ下と八幡が実行委員ということもあってしばらく中止となりますが、雪ノ下は相模の依頼を受けるという形で副委員長になります。雪ノ下は様々な仕事をさばいていきますが、それは同時に委員長である相模との能力差を示すことにもなっていきました。次第に雪ノ下の作業負担が増えていき、遂には雪ノ下が体調不良で休むことになります。

このような状況を打開するため、また、文化祭最終日に起きたさらなる問題に対処するために八幡は、平塚先生曰く「素直に褒める気にはなれない」方法で解決しようとします。今までの奉仕部での八幡の解決方法はひねくれてはいるものの、それなりに達成感があったように思います。しかし今回からは少し後味の悪いものに感じるかもしれません。それは八幡を気にかける平塚先生や同じ奉仕部の雪ノ下、由比ヶ浜にはなおさらのことでしょう。

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機動戦士ガンダムUC(6) 重力の井戸の底で

小説版「機動戦士ガンダムUC」の第6巻です。今回は地球が主な舞台となります。

大気圏突入でユニコーンガンダムごとガランシェールに回収されたバナージは、サハラ砂漠に不時着後、袖付きに協力するロニ・ガーベイと出会い、ラプラス・プログラムが示す次の座標である地球連邦政府の首都ダカールへ向かうこととなります。一方、移民問題評議会の議長ローナン・マーセナスはロンド・ベル隊のブライト司令を呼び出し、そのガランシェール捜索と息子のリディ少尉をブライトの艦に乗せるよう依頼します。

第6巻はアニメ版の episode 4「重力の井戸の底で」に相当しますが、各シーンが詳細に描写されます。例えば次のようなシーンです。

  • 地球連邦海軍の潜水艦「ボーンフィッシュ」が撃沈されるシーン。小説版では冒頭で乗組員たちの会話が描かれます。
  • バナージがジンネマンと二人で砂漠を越えるシーンでは、砂漠の過酷な環境が詳細に描かれます。特に、砂嵐に遭遇し、その後に目指していた町を見つけたジンネマンとバナージの喜び方はアニメ版では見られない印象的なシーンです。
  • ガランシェール隊のフラストが話す、ジンネマンの故郷が連邦軍兵士に襲撃された時の表現はアニメ版よりも惨いもので、ジンネマンの深い怨念を再認識させられます。
  • 北米オーガスタのニュータイプ研究所で、科学者たちがマリーダを洗脳するシーン。小説版ではマリーダ側の意識も描写されます。

しかし、小説版のもっとも異なる点は、ロニ・ガーベイでしょう。小説版ではロニの父マハディ・ガーベイが登場し、ダカールでの作戦に強い影響力を持ちます。アニメ版ではモビルアーマーシャンブロ」をロニが一人で操縦しますが、小説版では父と二人の兄の合計4人で操縦します。好戦的なのも父の方で、ロニはどちらかというとアニメ版よりも優しい少女に描かれており、その行動はアニメ版と大きく異なります。アニメ版では力強いロニが印象的でしたが、小説版のロニもぜひ知っていただきたいと思います。

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デザイニング・ウェブインターフェース

現在、Twitterによって開発されたBootstrapGoogleによって開発されたMaterial Design Liteのようなフレームワークや、特定のUIを実現するJavaScriptライブラリなどを利用することで 、少ない労力でリッチなウェブアプリケーションを提供することができます。HTML5やCSS3の普及によって表現方法や操作性はますます進化していくでしょう。本書は、ウェブアプリケーションのインタラクションデザインのパターンを75種類以上紹介します。全カラーページで、デザインパターンのカタログとして利用できます。

本書では次のような6種類の原則に基づいて各パターンを紹介します。

  • 第1原則 直接的なインターフェースを作ろう
    1章は「ページ内編集」です。従来は編集ページのような画面へ遷移して実現していたものに対し、インライン編集やオーバーレイ編集などの遷移無しに直接編集するデザインについて説明します。2章では「ドラッグアンドドロップ」について説明します。3章では「直接的な選択」として、従来のチェックボックスのようなトグル型選択のほか、ページ内のオブジェクトを直接選択するオブジェクト型選択などを説明します。

  • 第2原則 軽快さを心がけよう
    4章は「コンテキスト連動型ツール」です。常時表示型ツールや逆に必要な時だけ表示するロールオーバー表示型ツール、デスクトップアプリケーションの右クリックメニューのようなサブメニューなどを説明します。ただしサブメニューに関しては、ブラウザではデフォルトで右クリックメニューが表示されるのでウェブの世界では見つけにくいものとしています。

  • 第3原則 1ページで完結させよう
    基本的にページの遷移やリロードはユーザの行動を中断するものであるとし、それらを解決する方法を説明します。5章と6章ではそれぞれ「オーバーレイ」と「インレイ」を説明します。オーバーレイは画面の一部を隠してダイアログのようなライトボックスを表示したり、ツールチップを表示することです。一方インレイは、画面の一部を広げて情報を表示する方法です。7章では「バーチャルページ」として一画面に表示しきれない要素について、インラインページングやカルーセルなどの、従来のページングナビゲーション以外の方法を説明します。8章では「プロセスフロー」として、ユーザの操作のプロセス全体を1ページで行う方法を説明します。

  • 第4原則 インビテーションを仕掛けよう
    インビテーションとは、ユーザを操作へ誘導するための合図のことです。9章では「静的インビテーション」を、10章では「動的インビテーション」を説明します。

  • 第5原則 トランジションを利用しよう
    トランジションとは、映像効果やアニメーションのことです。11章では「トランジションのパターン」として明度/濃度の増減、展開/折りたたみ、回復型フェード、アニメーション、スポットライトを説明します。12章では「トランジションの目的」を説明します。むやみにトランジションを利用すると逆にユーザの集中が途切れるページになりかねないので、適切な目的で利用することが大切です。

  • 第6原則 すばやく反応しよう
    インビテーションが操作をする前の仕掛け、トランジションが操作中の効果であるならば、本原則は操作した後のリアクションについてです。13章の「情報探索のパターン」ではオートコンプリート、ライブサジェストなどを説明します。14章で「フィードバックのパターン」として、ライブプレビューや進行状況表示など、操作後の結果のフィードバック方法について説明します。

本書では具体的な実装方法は提示しません。それはフルスクラッチで実装する場合もあれば、ライブラリや外部サービスを利用できる場合もあるでしょう。また、実装の詳細に立ち入らないため、ウェブデザイナやUIの仕様策定者にも読みやすく、「オーバーレイ」や「インレイ」「インビテーション」「トランジション」などをチームで共通用語とすることで、デザインについてチーム内コミュニケーションが効率化できるかもしれません。

神の守り人〈下〉帰還編

神の守り人〈下〉帰還編 (新潮文庫)

神の守り人〈下〉帰還編 (新潮文庫)

守り人シリーズ第5巻の「神の守り人」下巻です。下巻は主に、捕らえられたタンダとチキサ、それを助けようとするバルサとアスラのそれぞれ二組の場面が物語を展開します。

タンダとチキサを助けるために、バルサとアスラがロタ王国へ向かう隊商の護衛として旅をするところから始まります。隊商は途中、吹雪を避けるために牧夫の小屋へ避難しますが、馬を狙った狼の群れに襲われます。なんとか応戦するバルサたちですが、狼の数に打つ手が無くなった時、再びアスラが「カミサマ」を呼び出そうとします。

一方、捕らえられたタンダとチキサでしたが、スファルの娘であるシハナは父をも欺く計画を進めていました。絶大な力を持つアスラを危険視して殺そうとするスファルに対し、シハナはその力を利用しようとしていたのです。それを知ったスファルはタンダと共に脱出することになります。

徐々にシハナの計画の詳細が明らかになり、現実味を帯びていきます。しかしそれはシハナだけの力ではなく、南部の大領主の思惑や王家の思惑、タルの民の思惑などが絡み合った結果でした。アスラの異能の力を取り巻くこれらの思惑と、アスラを道具のように扱う彼らからアスラを救い出そうとするバルサとタンダ。下巻は様々な思惑で様々な行動していた登場人物たちが、物語のクライマックスに向けてロタ王国のジタン祭儀場を目指します。

アスラの絶大な力は国が揺るがすほどの力ですが、バルサはあくまでアスラを一人の少女として助け出そうとします。それは、アスラが大切な人を守るためにその力で人を殺すことをも望んでしまうことに対し、バルサが自分の経験から、たとえ人を守るためでも人を殺すことのおぞましさをアスラに伝えたいという思いからでした。バルサは、アスラの身を助けるのと同時に、アスラが今後味わうであろうバルサと同じ苦しみからも助けようとしているのが印象的です。

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